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群雄伝から入る大河ドラマ 平清盛レビュー編(ネタバレ注意!)

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伸逸
伸逸
 はじめに
 現在英傑大戦で登場している時代区分のうち、日本が舞台となっているものは平安、戦国、江戸・幕末の三つだ。そしてこれら時代を貫くテーマとして、「武士の時代」というものが挙げられるだろう。平安はその始まり、幕末はその終わりだ。しかし一個人が触れる世界から得た見解ではあるが、平安という時代を触れた作品というものは、(戦国はいうに及ばず)幕末を触れた作品と比べると少数ではないかと思うのだ。

 私が知るその数少ない作品(?)のうちひとつ(?)が、このゲームの群雄伝「平氏伝」並びに「源氏伝」である。そして、群雄伝の中でもこの2つの出来は白眉だと思う。平氏伝では平清盛という男が天下を持ち上げるという夢を抱くまでのストーリーを、源氏伝では武士そして源氏という血を高みへ持ち上げるべく奮闘する義朝の悲哀を、サイドストーリーにも熱を入れたうえでしっかり描き切っている。自分はこの記事を書いた段階で群雄伝のイベントをすべて回収しているため、自信はたっぷりある。

 これは「群雄伝」から平安という時代に興味を持った歴史好きの皆様に、自分と同じ道を辿ってもらうべく書く、平安を舞台にした大河ドラマ作品「平清盛」のレビュー記事である。一個人の主観全開である点、およびネタバレ全開で行く点、ご容赦ください。


 平清盛
https://www.nhk-ondemand.jp/program/P202100265400000/
 
700年もの長さにわたり日本の国政を差配した武士政権、その始まりとなった男清盛の生涯を辿る。最低視聴率などの悪評こそたってしまったが、張り巡らされた複線、緻密な描写、そして主演松山ケンイチ氏の名演に魅了された人も多い、見る人が見るとハマる作品だ。群雄伝で触れた範囲はせいぜい本作の5分の3程度に過ぎず、英傑大戦では満足にフォーカスの当たっていない武将が大いに活躍する。
 
 
 見て欲しい点 「時代の主人公 清盛が抱える悲哀とその結末」(ネタバレ注意)
 自分がこの作品を見る上で最もフォーカスを当ててもらいたい点がここ、清盛という男の悲哀である。

 この作品において清盛の出自は群雄伝とほぼ同じ、白河院の落とし種(この表現が正しいかは知らんが)である。そしてこの白河院、群雄伝と同じように一種の闇を抱えた人物として描写されている。なんせドラマにおける彼の異名は「物の怪」だ。清盛を産み落とした母は、忠盛の前で、この「物の怪」の命の下数多の矢にその身を貫かれ命を落とす。
 彼が抱える夢は、「武士の世を作る」こと。そして「誠の武士になる」こと。これは父忠盛から受け継いだ夢だ。この夢は海賊兎丸や信西をはじめとする様々な人々との出会いを経て、「面白き世を作る」という夢へと進化していく。
 そしてライバル。家の立場こそ下なものの武士としての実力で清盛を凌駕する男、源義朝。彼の遺児にしてこの物語の語り部、源頼朝。同じ夢を目指しともに戦いながらも、後に反目し殺し合う。
 それら以上に重点を置いて語られているのが、一族というテーマだ。自分を育ててくれた偉大なる父忠盛。頼りになる忠臣家貞や盛国、忠清。理念の差の結果道をたがえた叔父忠正。自らの道を支えてくれる妻時子、明子。そして清盛の夢を支えてくれる息子たち。
 
 無論ドラマである以上脚色は大いにされているだろうが、これらのバックボーンを抱えた清盛が、ライバルとの戦いを経て自らの夢をかなえられる立場へとなり上がっていくサクセスストーリー。これほどまでに「主人公」という言葉が似あう人物が、平安という時代に他に存在しただろうか?

 しかし物語終盤、彼を支えるバックボーンは急速に、まるでネガ反転したかのように、彼をさいなみ、平家一門の運命を歪ませ始める。
 
 まず夢。彼は彼の抱える夢「面白き世」のために手段を択ばぬようになっていく。福原京への遷都、禿による苛烈な粛清。さらに平家一門への恐怖は、頼朝と八重姫の子の死という恐ろしい結果を伴って現れる。
 さらに家族。醜い血統争いの下誰にも必要とされなかった過去を持ち、清盛に憎まれることによって自らの存在を確認するクソ厄介なメンヘラ野郎、後白河法皇。彼と平家を結び付けていた滋子の死を始めとして、天が徳が足りないと嘆くような不運が彼の身内を襲う。最も目をかけた息子である重盛は平家と後白河との板挟みの末、生きる気力を消耗しきって死んでしまう。
 この不幸の中清盛は歪み、日本史上誰も見たことのない遥か高みを見るという夢は、自らの母を奪った世に対する復讐という手段へ、人格は親の仇である「物の怪」へと。体は武士の象徴であり親子の絆、最も強き者が持つ宋国の剣をまともに振れないほどに堕してしまう。
 そして終盤、とあるきっかけがもとに、人生を通して追い求めてきた「誠の武士」という目標と「面白き世」という目標を最早平家一門が両立させることは出来ないと判明してしまう。

 あまりといえばあまりな仕打ちだ。ここまでされる謂れはない!
 個人的な見解にはなるが、これは清盛が「創設者」でありながら「継承者」になれなかったが故の悲劇だと思っている。彼は日本史上前例のないことを、一切の先例やそこからの知見なしに実行しようとした。あまりに眩しすぎる夢はその足元を眩ませるのか、彼はその夢を誰かに託すための土台作りが出来なかった。    
皇室や貴族とは元々バチバチの関係なのだが、彼らとうまくやっていくための人材が、武士と貴族という階級のジレンマによる心的ストレスによって消耗してしまった。彼らがうまくやれないと見るや清盛はその夢の実現手段として力を押し通すようになっていく。まさに悪循環だ。
 一切前例のない功績と自らのアイデンティティを両立させようとした結果ボロボロに壊れていく清盛の姿には一見の価値がある。計り知れない重責と悲哀を背負った悲しき男としても、あるいは超上質な「曇らせ」物語としてもだ。
 
 総評
 ネタバレに関する配慮一切なしの下進める本末転倒な記事が出来上がってしまった。レビュー記事とはそういうものなのだろうか?
 個人的に英傑大戦から他のメディアへ派生する際の利点として、「人物がキャラクターという存在へ変化する点」というものがあると思う。堅苦しい肩書、重苦しい表情、難解な時代背景。それらを巧いことカードに記された情報と嚙み合わせることで、シンプルに記憶に残しやすくなるうえ、このカードはこういう経緯からこうデザインされたのかな、などという想像を膨らませることができるのである。この行為を楽しむことが出来たからこそ自分はこの英傑大戦というゲームが好きになったのである。
 この記事を読んだ皆様も、自分が知っているメディアと英傑大戦のカードデザインを重ね合わせて、改めて作品に触れる、という行為を行ってもらいたい。その行為の対象の中に、今回紹介した「平清盛」という作品が含まれていた、という方が自分以外にも存在することを願って、この記事の結びとする。
 
更新日時:2024/09/06 09:45
(作成日時:2024/09/06 03:13)
コメント( 2 )
guriffon315
guriffon315
9月6日 10時51分

私、大河の清盛は見てなかったので、勉強させていただきました。
清盛はどうしてもおごれる平家のイメージがあり、印象が良くないですが、英傑大戦の清盛は若々しくかっこいいですね。
平安時代をテーマにした作品、ゲームはあまりなく、詳しくない時代だったので、平安(鎌倉)時代が英傑大戦内にくるとは思わなかったですし、面白いですね。

伸逸
aruheno
aruheno
9月6日 13時3分

文に見入った

伸逸
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